- 2022.01.10(月)
- 遺言
遺言って一体何?遺言の意味や効力、書き方について解説します!
遺言とは、被相続人が自分の意思を相続に反映させるための手段のひとつです。
それでは、遺言にはどのような意味や効力があるのでしょうか。
あるいは、どのような手続きを踏めば、遺言に法的な効力が生まれるのでしょうか。
こうした点を正しく理解されている方は、意外と少ないのではないかと思います。
また、いざを書こうと思った際に、悩まれる方もいらっしゃることでしょう。
「どのように書けばよいか分からない」
「どんな方式を選択したらいいのだろうか?」
このような疑問の声に応えて、遺言の意味や効力、書き方について説明していきます。
目次
1.遺言の意味
それでは早速、どのような意味を持つのか具体的に見ていきましょう。
1)そもそも遺言とは?
遺言とは「被相続人の最終の意思表示」と言われています。
また通常、一般的に「ゆいごん」と読まれますが、法律家の間では、慣習的に「いごん」という読み方が用いられています。
この遺言を作成しておくことで、自らの意思を相続財産の継承に反映することが可能です。
なかには、「遺言はどんな形式でも法的に認められる」と思っている方がいらっしゃるかもしれません。
ところが、実際には、法律で定められた形式でなければ、遺言に法的な効果は発生しません。
2)遺言と遺書のちがい
遺言と聞くと、「遺書」を思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。
しかし、遺言と遺書は、その意味合いが大きく異なります。
- 遺書 → 死の間際に行われる意思表示であり、法律的な制約を受けない手紙
- 遺言 → 自分の死後のことに対して行った意思表示
(主に遺産分割方法の指定や相続分の指定、遺贈などについて記載)
つまり、「遺書」は、死の間際に自由な形式で残せる手紙や録音のようなものを意味します。
それに対して、一方の「遺言」は、必ずしも死の間際に瀕した意思表示ではありません。
遺書と違い、遺言には、死後の財産処分や遺産配分に法的な拘力を持たせることが可能です。
ただし、そのためには、法律で決められた要件を満たす遺言書を作成しなければなりません。
3)遺言のメリット
遺言のメリットは、大きく分けて2つあります。
- 被相続人が、自分の意思に基づいて遺産を渡す(遺す)ことができる
- あとに残された相続人の無用な争いを最小限に留められる
「死後に生じる遺産分割や財産の処分などに対して効力を及ぼすことができる」
相続人が、遺言によって最後の意思表示をする意味は、この点にあります。
さらに、遺言の効果は、財産を自分の意思に沿った形で配分できることだけではありません。
残された人々(相続人)の間で起こる無用な遺産争いを予防・最小化する効果もあるのです。
つまり、遺言とは、被相続人だけでなく、相続人にとってもメリットがある「遺産を分配する方法」だと言えるでしょう。
2.遺言の意義と効果
ここまでの確認で、遺言とはどのようなものかご理解いただけたのではないでしょうか。
自分の死後も自らの意思について効果を生じさせるために考案された制度。
それが遺言です。
それでは次に、遺言の効力について詳しく見ていきましょう。
1)遺言の効力
遺言があることで、自分の死後も法律関係を定めておくことが可能です。
なかでも、相続財産については、遺言の効力が大きく及ぶところになります。
遺言で法的効力が認められるものは、次のような内容です。
- 遺産分割方法の指定と分割の禁止
- 相続人の廃除
- 相続分の指定
- 相続財産の遺贈
- 後見人の指定
- 内縁の妻と子の認知(相続人に加えられる)
- 遺言執行者の指定または指定の委託
このように、遺言では、法定相続分と異なる相続分を指定することが可能です。
さらに、法定相続人ではない第三者に相続財産を渡すこともできます。
つまり、どの財産を誰に遺すかについて、具体的に決めることができるのです。
2)遺言にある一定の制限
このように見ると、遺言は財産を分ける万能な方法に感じられるかもしれません。
しかし、そこには一定の制限があることを忘れてはいけません。
たとえば、一定の相続人には、遺言でも奪えない最低限の取り分が保証されています。
この最低保証の権利のことを「遺留分」と言います。
そのため、たとえ遺言があったとしても、遺留分を侵害するような内容は要注意です。
遺留分を侵害する遺言は、相続人間のトラブルの原因にもなりかねません。
また、遺言は、意思決定能力のある満15歳以上の者でなければ作成することができません。
さらに、先にも述べたとおり、決められた形式で作成することも必要な要件です。
こういった遺言の制限に関する取り扱いについては、気を付けておきましょう。
3.遺言の作成方法
いかがでしょうか。
遺言って「想像していたよりも複雑」「書くのが難しそう」と感じた方も多いでしょう。
とにかく、遺言に関しては「記載内容に法的な効果が生じているかどうか」が重要です。
そこで、ここからは、具体的な遺言の作成方法について確認していきます。
1)遺言は法律の定めに従った方式で作成する
繰り返しになりますが、遺言は定められた方式で書かなければいけません。
たとえ、詳しく丁寧に描いたとしても、それだけで法的効力を持つことはありません。
つまり、「紙やノートに思いつくままをしたためた」では法的な効力は発生しないのです。
そのため、相続対策として作成する際は、要件について知っておく必要があります。
2)代表的な作成方法
それでは、作成方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
遺言の代表的な作成様式は、以下の3つです。
- 自筆証書遺言
- 秘密証書遺言
- 公正証書遺言
なお、秘密証書遺言に関しては、あまり使われることはありません。
そこで、今回は、自筆証書遺言と公正証書遺言の概要を表にしてみました。
両者の違いを確認してみてください。
遺言の種類
自筆証書遺言 | 自筆証書遺言(保管制度) | 公正証書遺言 | |
作成方法 | 遺言者(被相続人)が自署で作成 ※財産目録はPCでの作成や、謄本・通帳の添付での代用可 |
同左 | 公証人2人以上の立会のもと、遺言者(被相続人)が口述(筆術)し公証人が法律に基づいて作成 |
検認 | 必要 | 不要 | 不要 |
メリット | ・簡単に作成できる ・書き直しが簡単にできる ・費用がかからない ・遺言内容を秘密にできる |
・遺言の保管を依頼できる(紛失、廃棄・隠匿・改ざんのおそれがない) ・保管手数料が安い (1件3,900円) ・遺言内容を秘密にできる |
・偽造、変造のおそれがない ・遺言を正確に作成できる ・遺言の保管を依頼できる ・死後、遺言の執行が直ぐに可能 |
デメリット | ・紛失や偽造のおそれ ・形式不備で無効のおそれ ・代筆の場合は無効 ・本人の肉声でも音声での遺言は不可 |
・遺言者本人が出頭しなければならない(代理申請不可) ・自筆証書のため左記と同様の問題が発生する ・記載内容に不備があると無効 |
・費用がかかる(公証役場、証人) ・2人以上の証人が必要 ・遺言内容が公証人や証人に知られる |
自筆証書遺言書保管制度
また、民法改正に伴い、2020年7月から自筆証書遺言書保管制度が始まりました。
これは文字どおり、自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)で保管してもらえる制度です。
つまり、この制度は、自筆証書遺言の下記のデメリットを補完する効果があります。
- 遺言書を紛失してしまう
- 遺言書が相続人に発見されない
- 相続人が内容を改ざんしてしまう
- 方式不備により無効になる
ただし、保管の際の確認は、あくまで外形的な書式チェックにすぎません。
したがって、法的効力を持つ遺言だと保証してもらえる制度ではありません。
「預かってもらったけど、形式不備で無効」なんてことも十分あり得ます。
保管制度を活用される際はご注意ください。
3)どの方法を選択すべき?
このように、作成には複数の方法があります。
また、それぞれにメリットとデメリットが存在します。
自筆証書遺言であれば、他人の力を借りることなく、いつどこでも作成が可能です。
また、特別な費用もかかりません。
ですから、遺言を書く方にとっては、手軽で自由度が高い方法です。
しかし一方で、偽造・変造の恐れや、厳格な方式が定められているといった問題点もあります。
そういった意味では、手間やコストはかかりますが、確実に作成や保管ができる点は、「公正証書遺言」がおすすめです。
いずれにしても、それぞれの方法ごとに注意するポイントが異なります。
間違うことがないように、しっかり確認してから作成したいところです。
4.まとめ
今回は、遺言の意味や効果、書き方について解説しました。
遺言は「被相続人の最終の意思表示」です。
生前に作成しておくことで、自らの意思を相続財産の継承に反映することが可能です。
ただし、正しい様で作成しなければ、遺言の内容が無効となる場合もあります。
「どのように書けばよいか分からない。」
「相続関連の手続きをどのように進めていけばよいか悩んでいる。」
そんな不安をお持ちの方は、ぜひ相続専門の税理士までお気軽にご相談ください。