- 2022.02.01(火)
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遺産分割トラブル7つのパターンと回避方法
遺産分割トラブルは、さまざまなことが原因で生じる可能性があります。
トラブルは、相続人の決定から実際に遺産を分けるところまで、どの段階でも起こり得ます。
もし、トラブルが発生してしまうと、遺産分割協議をスムーズに進めることができません。
その結果、申告期限に間に合わず、延滞税が発生してしまうことにもなりかねません。
こうした事態を避けるためにも、遺産分割のトラブル事例を把握しておくべきです。
さらに、これらの遺産分割トラブルを回避する方法についても確認していきます。
目次
1.遺産分割トラブル7選
それでは早速、遺産分割トラブルでよくある7つのパターンについて見ていきましょう。
1)連絡が取れない相続人がいる
遺産分割トラブルで意外と多いのが、「連絡が取れない相続人がいる」ケースです。
遺産分割協議は、連絡が取れる一部の相続人だけで協議を進めるわけにはいきません。
相続人全員が参加して、遺産分割協議を行う必要があります。
集まれた相続人だけで協議をしたとしても、そこで決められた内容は無効になってしまいます。
しかし、長い間付き合いもなく、「連絡が取れない・取りにくい」相続人がいる場合はどうしたらよいでしょう?
その場合は、先ず、連絡先を調べるところから始めることになります。
もし、全く連絡先がわからない時には、本籍地の役所に申請をして戸籍の附票を取り、その住所に連絡をしてみる方法もあります。
それでもまだコンタクトが取れない場合には、また別の方法を考えなければなりません。
2)不仲のために協議が進まない
遺産分割トラブルと聞いて最もよく連想されるのが、このパターンかもしれません。
このパターンには、大きく2つのケースがあります。
1つが、もともと以前から不仲で、遺産分割の話し合いを進めるのが困難なケースです。
そして、もう1つが、遺産分割で互いの主張が折り合わず、不仲になるケースです。
どちらも話し合いは円滑に進みませんので、遺産分割協議はストップしてしまいます。
時には、「顔を合わせることすら嫌だ」「声も聞きたくない」といったところまで拗れてしまうことも珍しくありません。
その結果、何年間も遺産分割が進まないなんて状況に陥ってしまいます。
こうなってしまうと、もはや相続人間で協議を行うのは無理だと思います。
そこで、多くの場合は、家庭裁判所で調停を行うことになります。
3)際立つ一部の人の利益
他の相続人に不公平感を抱かれ、遺産分割トラブルになる事例もあります。
たとえば、よく例として出されるのが「特別受益」です。
つまり、トラブルの種は、被相続人と一部の相続人の間で行われた過去の贈与です。
特別受益では、生前に被相続人からもらったお金や物も、遺産の一部であると考えます。
そこで、遺産分割の際には、一度、特別受益分を遺産に戻して、各相続人の具体的な相続分を決定します。
「生前、長男は被相続人から土地の購入費用として500万円をもらったのに、次男はもらっていない」
具体的には、こういったケースなどがこれに該当します。
特別受益に関しては、扶養義務の範囲外での贈与や、相続開始前10年より前に相続人に対して行った生前贈与以外は、すべて対象とされています。
しかし、生前贈与が特別受益に該当するかどうかの判断は、簡単ではありません。
したがって、その定義の曖昧さから、揉め事に発展するケースも少なくありません。
また、生前に被相続人のお世話をした相続人に、財産をより多く渡す「寄与分」についても、同じ問題が起こり得ます。
これらは、法律と事実関係を勘案して判断していくことになります。
ただし、判断と言っても、明確な基準や答えがあるわけではありません。
こうした難しさが、遺産分割トラブルの原因になるのでしょう。
4)折り合いがつかない分割
遺産分割において、常に全員が同じ意見だとは限りません。
不動産などでは、相続人間での考え方の違いが顕著に現れたりします。
たとえば、遺産分割するにあたって、相続不動産を現物で取得したい相続人もいます。
しかし一方では、売却して得た現金を分割したいと考える相続人もいます。
遺産分割協議では、どうしても自分にとってメリットの大きい方法を主張するものです。
でも、互いの主張を前面に出せば、遺産分割は平行線を辿るだけです。
「どのように分割すればお互いにとって得になるのか」
協議を円満に進めるには、トータルで物事を考えていくことが大切です。
5)前妻との子どもとの関係
これは、被相続人と前妻との間に子どもがいるようなケースです。
離婚後に別の家庭を築いているような場合がこれに当てはまります。
被相続人が亡くなった場合、死亡時の家族から前婚の家族へ連絡がいくことになるでしょう。
なぜなら、遺産分割では、前妻との子どもにも相続分や遺留分が認められているからです。
ですから、死亡時の家族へ財産を引き継ぐ旨の遺言があっても、対策は万全ではありません。
場合によっては、前妻との子どもから遺留分侵害額の請求が行われる心配があります。
そういった事態に発展しないように、事前の調整が必要です。
6)遺産の隠蔽や使い込み
相続人のうち、どちらかが親の財産を管理しているようなケースで見受けられます。
実際に、管理している側の相続人、が遺産を隠したり、使い込んでしまうことがあります。
この場合には、当然、財産の開示を求めることになります。
もし、相手に開示を拒まれてしまうと、遺産の範囲を決定することができません。
その結果、円滑な相続手続きを進めることが非常に困難になります。
こうしたケースであっても、十分に話し合うことができれば、感情的な対立を避けられるかもしれません。
しかし、多くの場合、隠蔽や使い込みが発覚すると、関係性はこじれてしまいます。
ひどい時には、訴訟にまで発展してしまう事案も珍しくありません。
7)かたよった内容の遺言
遺言は、被相続人の意思を伝えるのに有効な手段のひとつです。
しかし、中にはバランスを欠いた内容の遺言も見受けられます。
たとえば、「長男にすべての財産を相続させる」といった感じの遺言です。
そうなりますと、相続人の中から不満が出ることも少なくありません。
また、特定の相続人だけが優遇されているような遺言には、注意が必要な場合もあります。
なぜなら、被相続人が意図してなかった遺言の可能性があるからです。
実際に、相続人や周囲の人が主導して遺言を書かせていたなんてこともゼロではありません。
もし、そういったトラブルに遭遇した際は、遺言無効確認訴訟などで対抗していくことになります。
2.遺産分割トラブルの回避方法
分割トラブルが原因で遺産分割協議が進まなくなると、次のような事態が起こります。
- 親族同士の関係が悪化する
- 相続手続きに時間がかかり、精神的な負担が増す
- 相続税の特例が利用できなかったり、相続税の負担が増えてしまう
それでは、こうした問題を避けるためには、どうしたらよいでしょうか。
具体的な対策方法は、下記の2点です。
1)遺言作成と遺言執行者の指定
まずは、被相続人に適切な内容の遺言を残してもらうことです。
相続人が二人以上のケースでは、当事者間で揉める可能性があると考えてください。
しかし、遺言があれば、遺言に沿って遺産の分割手続きが進んでいきます。
ですから、相続人間で余計なトラブルが起こることが激減します。
さらに、遺言で遺言執行者を指定しておくことです。
遺言執行者を決めておけば、スムーズに相続手続きが実行できます。
相続の手続きを円滑に進められる…。
これこそ、相続における最大のメリットと言っても過言ではありません。
2)生前の相続会議
「相続」や「遺産分割」は、被相続人が亡くなってからとお考えじゃありませんか?
でも、相続が起きてから話し合いをはじめていては、間に合いません。
互いの利害がぶつかり合って、遺産分割トラブルへと繋がっていきます。
では、分割トラブルを避けるには、どうしたらよいでしょう?
それには、ご家族で相続に関する話し合いの機会を持つことです。
そこで、お互いの相続に関する考え方を共有しておくことが大切です。
親の死後に子供だけで話し合うよりも、生前に親を交えて家族全員で話し合っておく。
こうした機会を持つことで、余裕をもって、冷静に物事を考えられるようになります。
その結果、余計な対立や生じる不満をグッと抑えることにも繋がっていきます。
3.まとめ
今回は、遺産分割トラブルでよくある7パターンについて確認しました。
また、その際の分割トラブルを回避する方法についてもお伝えしました。
「あらかじめ遺産トラブルになりやすいパターンを知っておく。」
これは、実際の相続手続きや相続対策を進めていく上でとても重要です。
もし、話し合いが滞ってしまったら、どうなると思いますか?。
恐らく、親族間の関係性は悪くなるでしょう。
もしかしたら、余分な税金の負担が増えてしまうことだってあるかもしれません。
「相続が起きたらどのように対処するのか」
普段から家族間で話し合っておきたいところです。
とはいえ、
「相続ってなんだかよくわからない」
「具体的に何から始めればいいの?」
と思う方もいらっしゃると思います。
そんな時には、ぜひ相続専門の税理士が主催するセミナーへ参加してみませんか?
分割トラブルの回避方法も、余すところなくお伝えいたします!