- 2022.01.03(月)
- 相続
相続税とは?初心者でもわかる相続税の基礎知識
相続や税金の話をする際に、「相続税」という言葉をよく耳にしますね。
でも、相続税って、どんな税金なの?
あらためて考えてみると、相続税について説明するのって案外難しいものです。
そこで今回は、はじめての方にもわかるように相続税について確認していきます。
目次
1.相続税とは?
相続税とは、相続や遺言で財産を取得した場合に発生する税金のことです。
相続税は、遺産の額が基礎控除額を超えた場合に、その超えた部分に対して課税されます。
1)相続税の基礎控除額
相続税の基礎控除額は、以下のとおり計算します。
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
つまり、相続税の基礎控除の額は、法定相続人の人数によって変わることになります。
法定相続人の数 | 計算式 | 基礎控除額 |
1 | 3,000万円 + 600万円 × 1人 | 3,600万円 |
2 | 3,000万円 + 600万円 × 2人 | 4,200万円 |
3 | 3,000万円 + 600万円 × 3人 | 4,800万円 |
4 | 3,000万円 + 600万円 × 4人 | 5,400万円 |
5 | 3,000万円 + 600万円 × 5人 | 6,000万円 |
この基礎控除を上回った分が相続税の課税対象となり、それ以下の場合には課税されることはありません。
2)相続税の税率
それでは、相続税の税率はどうなっているのでしょうか。
相続税は、財産の価額が高くなるほど税率が上がる仕組みになっています。
これを累進課税制度といいます。
相続税の税率は、10%からなんと最高55%までの8段階です。
ただし、遺産にこの税率を直接乗じるわけではありません。
相続財産から基礎控除分を引いた残りの価額を民法で定める相続分であん分した額に税率をかけます。
その時の法定相続分に応じて適用される税率と控除額は、次の表のとおりです。
この表で法定相続人ごとの税額を計算し、それを合計したものが相続税の総額になります。
相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除 |
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
計算した結果、相続財産である現預金から相続税が支払えないようなケースも出てきます。
たとえば、遺産の中に高い評価額がついてしまう不動産が多く含まれる場合などですね。
こうした場合には、相続人は自分で納税資金を用意しなければなりません。
自分の預貯金を切り崩したり、銀行で借り入れたり、
時には、納税のために不動産や株式を売却しないと、なんてことが起こり得ます。
ですから、先ずは一度、相続税がどれくらいかかりそうか試算してみてください。
そこで、もし、相続財産の中の現預金では納税資金が足りないようなら、どのように相続税のお金を用意するか早めに検討しておきましょう。
2.相続税の課税対象財産
ここまでのところで、相続税とはどのようなもので、どのくらいの税率で課されるのかについて確認してきました。
それでは、相続税って、どんな財産にかかるのでしょうか。
ここからは、相続税の課税対象となる財産について見ていきましょう。
1)相続税がかかる財産
相続税がかかる財産は大きく次の3つです。
① 本来の相続財産
本来の相続財産とは、相続や遺贈によって取得した財産のことです。
この財産には、金銭で見積もることができる経済的価値のあるすべてのものが含まれます。
・宅地、山林、農地などの土地
・敷地権、借地権、地上権などの権利
・区分建物、駐車場、倉庫などの建物
・借家権
・現金や預貯金を含む金融財産
・自動車
・家具
・貴金属
・骨董品
・各種会員権(ゴルフなど)
・著作権、商標権、特許権などの権利
などですね。
② みなし相続財産
みなし相続財産とは、民法上は相続財産ではありませんが、その性質から見れば相続財産と同等と考えられる財産などのことです。
言い換えれば、被相続人が亡くなったことで、受け取った財産がこれにあたります。
こうした財産や経済的利益に対して相続税を課税しないと、税の立場上、公平性を保つことができません。
そこで、相続税法上は財産とみなして、相続税がかけられることになります。
みなし相続財産の代表的なものは次の2つです。
・死亡保険金(被相続人が保険料を負担していた生命保険契約)
・死亡退職金
③ 贈与財産
生前に被相続人から受けた贈与財産についても、相続税の課税対象となるものがあります。
- 相続開始前3年以内の贈与財産(暦年贈与。ただし、一定の特例を受けた場合を除きます)
- 被相続人から相続時精算課税の適用を受けて取得した贈与財産
- 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税の適用を受けた場合の管理残額(一定の場合を除きます)
- 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税の適用を受けた場合の管理残額(一定の場合を除きます)
2)相続税がかからない財産
一方で、相続税がかからない、相続税の課税対象とならない財産も存在します。
これらは、政策的な配慮などから非課税とされています。
代表的なものとして、次のような財産があります。
・墓石や墓地、仏壇や仏具
・死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数までは非課税)
・死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数までは非課税)
・国や地方公共団体などへ寄付した相続財産
・公益を目的に使用されることが確実な財産
などです。
ただし、墓石や墓地、仏壇や仏具のうち、価値のある高額なものについては課税の対象です。
3)相続財産の評価方法
相続税がかかる財産の種類については確認できました。
それでは、これら財産の金額はどのように評価するのでしょうか。
相続税法では、財産の価額は「時価」であると規定しています。
そして、その時価は、財産の種類ごとに評価方法が定められています。
この定めを「財産評価基本通達」といいます。
たとえば、不動産の場合であれば、路線価や固定資産税評価額をもとに計算されます。
でも、こうした評価方法に基づいて価額を算出するのは簡単じゃありません。
ですから、不動産や自社株など評価の難しい財産をお持ちの方は、一度、税理士などに相談なさってみてください。
ちなみに、相続財産の評価はプラスの資産だけではありません。
被相続人の借金などの債務や葬式費用についても、時価(実額)で金額を算定します。
3.相続税の納税義務者
相続税を計算した結果、納税が必要となった場合、相続税を納めなければならないのは誰でしょうか。
基本的には、相続税の納税義務者は、被相続人から相続や遺贈で財産を取得した方々です。
そして、自分が取得した財産等の価額に応じて、納付すべき相続税の金額が算定されます。
しかし、相続税の納税義務者は、必ずしも法定相続人だけとは限りません。
1)相続税を納める可能性のある人
それでは、相続税を納める可能性がある人とは、どんな方でしょうか。
基本的に、下記の方々が「相続税を納める可能性のある人」ということになります。
・生前贈与を受けた相続人(相続放棄をした人は除外)
・遺産を継承した相続人
・遺言で遺産を継承した人(生前お世話になった知人など、法定相続人とは限らない)
・相続放棄をしているが、保険金は受け取った相続人
ちなみに、遺産総額が基礎控除以下で相続税の申告が必要ない場合は、相続税を納める必要はありません。
しかし、相続税が発生しない場合でも相続税の申告が必要なケースもあります。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などの特例を利用した場合などです。
ですから、申告を忘れてしまうことのないよう注意が必要です。
2.相続税を納めることになったら・・
相続税の納付期限は、相続が発生したことを知った日の翌月から10か月以内です。
納税の方法には、延納(分割して納めるケース)や物納(不動産などで納めるケース)といった方法もあります。
しかし、原則、納税は「現金一括払い」です。
もし、不動産は沢山あるけど現金が少ないといった相続は、相続財産の中から納税資金を用意できないなんてケースも珍しくありません。
そうした場合には、次のような方法で納税資金を捻出することになります。
・不動産を売却して納税資金に充てる
・相続人が自腹で納税資金を支払う
・生命保険を活用する(ただし、生前の加入が必要)
・納税資金調達ローンを金融機関で組む
納税期限近くになって慌てても、お金は急に用意できません。
「資金調達に駆け回っていたら納税期限を過ぎてた!」
そんなことがないように、計画的に準備を進めておきましょう。
また、たとえ申告期限までに遺産分割が決まらないとしても、期限内に仮の相続税申告と納税が必要です。
「遺産分割協議で揉めてしまい、いつまでたっても結論がまとまらないから…」
そんな理由で申告と納税を先延ばしにしていると、「無申告加算税」や「延滞税」の対象にもなりますので、要注意です。
4.まとめ
今回は、はじめての方にもわかるように、相続税について確認しました。
相続税という税金は、相続する財産の価額や内容によって税額が変わってきます。
相続税の特例や控除を上手く活用することで、税額が発生しないケースもあるでしょう。
とはいえ、税額の計算や納税資金の準備は、間違いなく相続人にとっての大きな負担です。
相続の時に慌てないためには、事前に知識や情報を身に付けておくことが大切です。
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