- 2022.01.12(水)
- 相続
- 介護・認知症
介護による相続トラブルと防止方法を解説!
近年、介護にまつわる相続トラブルが増えています。
それは、少子高齢化により長生きする方が増え、親族が介護するケースも多いためです。
介護絡みの相続トラブルを防止する。
そのためには、親の生前から適切な対策を行っていく必要があります。
今回は介護から発生する相続トラブルについて、対処方法を含めて解説します。
1.介護がらみの相続トラブル
介護絡みの相続トラブルとしてどういったものが多いのか、ご紹介していきます。
1)介護した相続人が多くの遺産を希望
特定の相続人に介護の負担が集中してしまったとします。
その相続人は介護した分、多く遺産を受け取りたいと希望しました。
ところが、他の相続人は「親族なんだから介護して当然」と受け止めました。
その結果、多めの遺産分割は認められずトラブルに繋がる。
そんなケースも少なくありません。
2)介護した相続人による使い込み
一方で、介護した相続人が、被相続人の預金等を使い込んでしまうトラブルもあります。
これには、故意の場合と意図せず使い込んでしまった場合の両方がありえます。
3)認知症になってから作成した遺言書が無効に
認知症が進行してから遺言を書いても、法的には無効になってしまうことがあります。
実際に、遺言書が書かれた時期を巡って、他の相続人が「遺言書の無効」を主張する。
訴訟などの大きなトラブルに発展してしまうケースも実は珍しくありません。
2.認知症になると相続対策できない!
1)介護や相続対策に不可欠な意思能力
人が有効な法律行為をするためには「意思能力」が必要になります。
意思能力とは、自分の法律行為の意味を理解できる能力です。
しかし、認知症が進行してしまうと、意思能力が失われてしまうことがあります。
意思能力のない状態では、一切の法律行為を行うことができなくなってしまいます。
たとえば、任意後見契約や家族信託契約、不動産の売却や活用などはできません。
他には、預金が凍結されてしまうといったケースもあります。
したがって、認知症になる前に、老後や相続の対策を行っておくことが必要です。
3.親の介護でたくさん相続?寄与分とは
相続人の中で介護をした者が、他の相続人より多くの遺産を主張する。
介護にまつわるトラブルの典型事例といってよいでしょう。
1)介護への貢献と遺産分割
民法に「寄与分」という制度があります。
これは、熱心に介護を行い、遺産の増加や維持に貢献した場合に認められる制度です。
しかし、寄与分の対象は相続人に限られます。
さらに、親族の扶養義務の範囲で介護した程度では、通常、寄与分は認められません。
2)寄与分の実情とトラブル
また、具体的に、どの程度の寄与分が認められるのかもケースバイケースです。
ですから、「親の介護をしたから当然に多く相続できる」という考えは禁物です。
期待はずれになってしまう可能性がありますので、ご注意ください。
実は、寄与分が原因で、数年にわたる相続争いに繋がる事例も珍しくありません。
家庭裁判所での遺産分割調停や審判へ発展してしまうような場合です。
もし、そうなってしまえば、当然、兄弟の仲は断絶してしまうことになるでしょう。
3)新設された特別寄与制度
さらに、民法改正で、相続人でない嫁や孫等の介護の貢献も、金銭で請求可能になりました。
これを特別の寄与といいます。
でも、この制度も、特別寄与者から相続人に対して請求することが必要です。
実際の相続の現場では、なかなか簡単にはいきそうにありません。
介護や相続トラブルが発生すると、当事者は非常にストレスを抱えることになります。
その上、時間も労力も無駄になってしまいます。
トラブル原因は未然に防ぐことが重要です。
4.介護と相続で揉めないための対処方法
こうした介護絡みの相続トラブルを防ぐために、次のような対策を行っていきましょう。
1)親が元気なうちに家族で話し合う
まずは、親が元気なうちに家族で話し合いの場をもうけることです。
親と子が各々独断で動いてしまうと、疑心暗鬼を生んでトラブルとなる恐れがあります。
そこで、できるだけ早く、親の意向や介護の方向性を家族で共有することをお勧めします。
2)財産管理の方法を明確化する
そして、親の財産の管理方法を明確にしておくことです。
これは故意かどうかにかかわらず、介護する方の使い込みを防止するために重要です。
特に、親の銀行預金を誰が管理するのかは、必ず決めるようにしてください。
3)遺言書を作成する
遺産分割に関するトラブルを防止するには遺言書が必須です。
遺言は、ご本人にが元気(意思能力がある)うちしか作成できません。
誰にどの資産を引き継がせるのか明らかにした遺言書の作成に取り組みましょう。
5.必要な介護対策
介護も相続も、一番のトラブル原因は、家族のコミュニケーション不足です。
介護や相続対策は、親が勝手にやるものではありません。
当たり前に親がやるものでもありません。対策は家族で進めていくものです。
介護が必要になったときにスムーズに対応する。
そのためには、将来の介護対策について、家族で話し合いを重ねてください。
そして、親が元気なうちに、次のような対策をしておくとよいでしょう。
1)元気なうちに介護方法を検討
まず、親が元気なうちに、老後の介護や具体的な対応方法を決めておくことが大切です。
ご本人の希望も聞きながら、以下のような内容を取り決めましょう。
なお、ここで協議する家族は、介護する子と介護される親だけではありません。
介護しない(できない)他のお子さんも、話し合いには参加してください。
2)介護施設への入居に関する検討
その際に、介護施設へ入居か、自宅介護かについて検討します。
もし、施設へ入居するなら、どういった施設があるのか調べていくとよいでしょう。
自宅介護でいくならば、誰がどういった方法で介護するのかを決める必要があります。
その際に考えるべきは、介護する人の負担や費用の問題があります。
特定の親族への介護の負担が重くなりすぎる場合には、施設入所も検討すべきです。
3)介護のキーパーソンは誰か
介護が必要になった場合、誰がキーパーソンになるかも話し合っておきましょう。
施設へ入居となれば、親族の誰かが施設と連絡を取り合う必要が生じます。
介護制度の利用の際には、行政への手続きなども行っていくことになります。
介護はある日突然、必要になることだって考えられます。
「そうなってから」ではなく「そうなる前に」キーパーソンを決めておいてください。
4)自宅などの不動産の売却
親が住んでいる自宅について考える必要があります。
親亡き後、相続人の誰かが住むのであれば、分割について考えなければいけません。
もしくは、施設へ入居するとなれば、まとまった頭金が必要なケースもあります。
その際に、自宅が空き家になってしまう場合は、売却して頭金とする選択もあります。
しかし、所有者である親が認知症になってからでは、その対応は非常に難しくなります。
そこで、以下で説明する任意後見契約や家族信託契約を締結しておくとよいでしょう。
5)任意後見や家族信託の利用
親が元気なうちに、任意後見契約や家族信託を設定しておく。
これは来たる老後や認知症対策としては、有効な方法です。
任意後見とは、将来自分で財産管理できなくなった時に、あらかじめ決めておいた後見人に財産管理してもらえる契約です。
家族信託は、信頼できる家族に財産を預けて管理してもらう契約です。
認知症になる前であれば、こういった対策を進めていくことが可能です。
親の希望や家族の状況に応じて、早めに検討しましょう。