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2022.02.02(水)
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家族信託とは?制度の仕組みを徹底解説

家族信託とは?制度の概要や仕組みを徹底解説

今、新しい相続対策や財産管理の方法として注目される「家族信託」。

 

 

家族信託を活用することによって、柔軟な老後や相続対策ができるようになります。

 

そのため、財産管理や対策の一環として、家族信託を取り入れる方も増えてきています。

 

 

とはいえ、

 

「家族信託ってあまり聞き慣れない」

 

「家族信託が相続対策においてどんなメリットがあるのか?」

 

 

そんな風に疑問を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 

ここからは、家族信託の仕組みやメリット・デメリットについてご紹介していきます。

 

1.家族信託の概要

家族信託の概要

 

それでは、まず家族信託の概要から解説していきます。

 

1)家族信託、民事信託とは

家族信託は、自分の財産を代わって管理してもらう制度のことです。

 

 

他の言い方として、「民事信託」と呼ばれることもあります。

 

 

この家族信託とはどういった内容の制度でしょうか。

 

 

家族信託は、自分の老後の生活や介護など特定の目的のために実施します。

 

簡単に言えば、財産を信頼できる家族に託して、管理や処分を任せる仕組みです。

 

財産を託すことで、柔軟に財産の管理や運用、処分を行うことが可能になります。

 

 

また、自分の望む形での相続が実現できるように設計することなんかも可能です。

 

最近では、この家族信託が新しい財産管理や相続対策の方法として注目を浴びています。

 

 

具体的には活用方法としては、

  • 認知症など、判断力が低下した際の財産管理の方法として活用する
  • 相続トラブルを防ぐために、長期的な相続対策として活用する
  • 遺言書や贈与では難しい「二次相続対策」として活用する
  • 事業承継対策として活用する

 

といったものが挙げられます。

 

 

2)「信託」が持つ意味

そもそも、家族信託の「信託」とはどんな意味を持つのでしょうか。

 

 

信託とは、財産を預けたり管理してもらったりすることの総称です。

 

 

しかし、単に自分の財産を預けるわけではありません。

 

読んで字のごとく、財産を管理してくれる人に「信じて託す」ところがポイントです。

 

 

とはいえ、信じて託したのに、相手に自由に使われたり、管理を放置されてしまっては意味がありません。

 

 

そこで、信託ではルールとして「信託契約」を交わします。

 

 

信託契約では、法律に反しない範囲で、自由に契約内容を決めることが可能です。

 

 

2.家族信託のメリット・デメリット

家族信託のメリット・デメリット

 

それでは続いて、家族信託のメリットとデメリットについて見ていきましょう。

 

 

1)家族信託のメリット

家族信託には3つのメリットが考えられます。

  • 自分と家族の希望に合った財産管理ができる
  • 柔軟な相続対策が可能
  • 判断力が衰えても、トラブルや事件から財産を守れる

 

それぞれ説明していきます。

 

 

自分と家族の希望に合った財産管理ができる

人生100年時代。

 

年齢を重ねていくことで、認知症や病気になる可能性は年々高くなります。

 

 

そうした場合に、本人に代わって財産を管理する方法には、家族信託以外にも「成年後見制度」があります。

 

 

成年後見制度は、家庭裁判所から選任された後見人が財産を管理してくれる仕組みです。

 

 

しかし、成年後見制度では、本人にとってマイナスかどうかが判断の指標となります。

 

 

つまり、成年後見制度は「家族ではなく、あくまでもご本人の財産を守る」制度なんです。

 

ですから、本人の財産を減らす結果になってしまう行為が認められることは、基本的にありません。

 

要するに、家族の希望に沿うような財産管理はできないという問題点があるのです。

 

 

かりに、本人が「○○の財産を○○へ相続したい」という希望があっても、成年後見制度で実現することはできません。

 

 

それに対して、家族信託は、本人や家族の意向に沿って財産を適切に管理することが可能です。

 

さらに、将来の相続に対しても、自分の希望を反映しやすいというメリットがあります。

 

 

柔軟な相続対策が可能

希望に沿った相続対策という点では、「遺言も有効なのでは?」と思う方もいらっしゃることでしょう。

 

 

しかし、遺言の場合には、「相続後に財産を処分されかねない」「二次相続ができない」といったデメリットも存在します。

 

 

例えば、本人(被相続人)が「この不動産を自分の死後も大切に所有してほしい」と思っていたとします。

 

 

でも、相続人に所有し続ける意思がない場合に、遺言では売却や処分を止めることを強制できません。

 

 

一方、家族信託の場合には、家族との契約として管理や運用を約束します。

 

 

ですから、自分の希望を信託契約に盛り込むことが可能です。

 

 

また、遺言書では、二次相続の財産の承継先を指定することはできません。

 

 

これに対して、家族信託は、先々の相続に対しても希望を伝えることが可能です。

 

そうすることで、将来の相続時のトラブルや揉め事、懸念事項を減らすことにもつながります。

 

 

判断力が衰えても、トラブルや事件から財産を守れる

平均寿命と健康寿命という言葉があります。

 

 

長生きできる世の中になりました。

 

 

しかし、歳を重ねるにつれて、買い物や外へ出かけることが次第に億劫になることは容易に想像されます。

 

 

また、場合によっては、認知症が原因で、適切に自分の財産を管理できなくなることもあるでしょう。

 

 

そんな時こそ、家族信託の活用が効果的です。

 

 

家族信託を利用して、信頼できる家族に財産を任せておけば、その家族(受託者)が代わりに財産の管理や運用を行ってくれます。

 

 

これは、認知症などで判断力が低下した場合でも同様です。

 

 

家族信託契約を交わしておけば、認知症リスクから自分と家族を守ることが可能です。

 

 

自分の老後と相続時の財産保全や承継について安心して生活ができる。

 

これこそが、家族信託最大のメリットと言えるでしょう。

 

 

2)家族信託のデメリット

それでは続いて、家族信託のデメリットについて確認していきます。

 

 

一見、家族信託はメリットばかりのようにも感じられます。

 

 

しかし、家族信託にも注意(留意)すべき点がいくつかあります。

 

これをデメリットと呼んでよいかは難しいところですが、概ね以下の通りです。

  • 契約書の作成に法律家の手助けが必要
  • 税務処理や申告作業の手間が増える
  • 節税対策は別途必要

 

こちらも1つずつ確認していきます。

 

 

契約書の作成に法律家の手助けが必要

家族信託をはじめる際には、当事者間で契約を取り交わさないといけません。

 

 

ただし、この契約書の作成が難しいんです。

 

 

ですから、家族信託の契約書の作成に、専門家の手助けを要するのがデメリットの一つともいえます。

 

 

家族信託契約では、

 

どのように本人の財産を管理するのか、

 

家族の要望をどのように盛り込むのか、

 

といった一つひとつの項目について、具体的に内容を決めていかなければなりません。

 

 

その際には、当然ながら相続や実務周りの知識やノウハウが必要になってきます。

 

 

自己判断で書籍やインターネットの情報を頼りに契約書を作成してみる…。

 

でも、先々や万が一のことを考えると、やはり心配です。

 

 

それなら、やっぱり、専門家に頼もうとなりますが、これも容易ではありません。

 

なぜなら、家族信託に詳しい専門家がまだまだ多くないからです。

 

 

ですから、専門家を探すのにかかる時間や金銭的コストも、ご本人とご家族にとってはネックとなるでしょう。

 

 

 

税務や申告作業の手間が増える

家族信託で信託した財産から年間3万円以上の収入を得た場合は、税務署に書類を提出しなければなりません。

 

 

この書類は、信託計算書と信託計算書合計表と呼ばれるもので、毎年1/31までに提出することになっています。

 

 

さらに、信託財産に収益不動産が含まれる場合にも、手続きが増えることになります。

 

 

信託財産の中から不動産所得が発生した場合は、確定申告の際に、信託財産に関する明細書の作成が必要です。

 

 

これは、通常の不動産所得用の決算で作成する明細書とは別に作成しなければなりません。

 

 

こうした具合に、家族信託をしなかった時よりも税金面での手続きが増えてしまうケースがあります。

 

 

これらの税金関係の手続きを税理士に依頼する場合には、その分の報酬も必要です。

 

 

節税対策は別途必要

家族信託は、長期的な視野に立って相続対策をする際にはとても有効な方法です。

 

 

しかし、家族信託そのものに相続税を軽減するような効果はありません。

 

 

なぜなら、税制は受益権が移動した際に税金が課されるよう規定されているからです。

 

 

例えば、委託者と受益者が同一人物の信託契約である自益信託の場合、受益権は本人から移動していません。

 

 

したがって、信託開始時には課税関係は発生しません。

 

 

つまり、自益信託の場合には、本人の死亡に伴い、受益権や信託財産を承継する者に対して、相続税が課税されます。

 

 

また一方で、信託契約の際に委託者と受益者が異なる信託を他益信託といいます。

 

この場合は、信託開始時に受益権が移動します。

 

 

ですから、委託者から受益者への贈与として贈与税が課税されます。

 

 

家族信託=節税(相続税)対策ではありません。

 

この点は、くれぐれもご注意ください。

 

 

3.まとめ

今回は、家族信託の制度の仕組みやメリット・デメリットについてご紹介しました。

 

 

家族信託は、自分や家族の希望を反映させることができる財産管理の方法です。

 

 

また、柔軟な相続対策ができる方法としても非常に効果的です。

 

 

でも、残念ながら、家族信託さえしておけば大丈夫!といった万能な対策でもありません。

 

「どのようなことが自分や家族の希望なのか」

 

「どのように家族信託を活用すればメリットを最大化できるか」

 

こういったところを踏まえて、家族信託を実施すべきか検討を始めてみてください。

 

 

「でも、老後や相続対策として家族信託が最適な方法なのかよくわからない」

 

 

「相続対策全般について専門家に質問してみたい」

 

 

もし、そんなお悩みをお持ちでしたら、相続専門の税理士が主催する「相続セミナー」がおすすめです。

 

 

家族信託を含め、最近の相続や老後対策のポイントや注意点についてお伝えしています。

 

 

ぜひ、この機会に相続対策を一緒に考えてみませんか?