- 2022.01.14(金)
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生命保険は相続できる?相続対策として生命保険を活用する方法とは
生命保険は、遺産分割や相続税の支払いを円滑に進めることが可能です。
さらに、活用の仕方次第で、生命保険は相続対策の有効な手段にもなります。
しかし、被相続人がかけていた生命保険をどのように取り扱えばよいか分からない…。
相続が始まった際に、そういった悩みを抱える方は多いものです。
特に、初めて相続に直面した方にとってはなおさらです。
生命保険金の税制や相続手続きを複雑に感じる方々も少なくありません。
そこで、生命保険と相続の関係や、相続対策への活用方法について解説していきます。
目次
1.生命保険と相続との関係
それでは早速、生命保険と相続との関係性から見ていきましょう。
初めて相続を経験する方の中には、「そもそも、生命保険は相続財産なのか?」という疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
1)生命保険は相続財産なのか?
原則、生命保険は相続財産ではありません。
そのため、相続の手続きとは切り離して考えられる場合がほとんどです。
ただし、一部のケースでは相続手続きに影響を及ぼす場合もあります。
こちらは後ほど説明いたします。
2)「死亡保険金」の相続税法上の取り扱い
生命保険のことで相続人の方が最も気になるのは、「死亡保険金」の取り扱いでしょう。
先ほど、生命保険は相続財産には当たらないと説明しました。
法律上、死亡保険金は「受取人の固有財産」という扱いになります。
つまり、相続人が複数いても、死亡保険金は遺産分割協議の対象外です。
したがって、遺産分割協議書への記載も必要ありません。
しかし、一方で、死亡保険金は「相続税」の課税対象です。
ですから、この民法と税法の取り扱いの違いは、注意しておかないといけません。
だけど、なんで、死亡保険金は相続税の課税対象になるのでしょうか?
次のような保険契約を例に考えてみます。
- 保険契約者 :被相続人
- 被保険者 :被相続人
- 保険料負担者:被相続人
- 保険金受取人:相続人
被相続人が自分で入って、自分で保険料を支払います。
それで、自分が亡くなったら、相続人に死亡保険金が入ります…といった契約ですね。
相続対策としては一番スタンダードな保険加入の仕方だといえます。
さて、この場合の死亡保険金なんですが、原資っていったい何でしょう?
そうですね。被相続人が負担していた保険料です。
つまり、この死亡保険金は、被相続人の負担により生じたお金(財産)なんですね。
だから、相続税では、被相続人のお金が受取人へ相続されたとみなされるわけです。
その結果、相続税法上、死亡保険金は「みなし相続財産」として扱われます。
3)相続税における生命保険金の非課税枠
ただし、生命保険金には、相続税の基礎控除とは別に下記のような非課税枠があります。
死亡保険金の非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数
ですから、相続人が受け取った保険金がこの範囲内であれば、相続税はかかりません。
なお、相続人以外の人が取得した死亡保険金には、この非課税枠は適用できません。
2.生命保険が相続財産となるケース
民法上の相続財産として、死亡保険金が遺産分割の対象になることは殆どありません。
しかし、例外として、相続財産に該当して遺産分割の対象になってしまう場合があります。
それは、次のような場合です。
- 生命保険金の受取人が指定されていないケース
- 生命保険金の受取人が被相続人であるケース
それぞれについて解説していきます。
1)保険金受取人が指定されていない
1つ目のパターンは、生命保険の受取人が決まっていないケースです。
何らかの事情で、生命保険金の受取人が指定されていないケースが稀にあります。
他にも、受取人が「相続人」とだけしか指定されていない保険契約があったりします。
こうした受取人が特定できないケースは、「相続財産」として扱われることになります。
この場合、約款や遺言で指示がない限り、法定相続人が保険金の受取人です。
したがって、先ずはどのようなケースでも、保険約款を確認するようにしてください。
また、最近では、被相続人よりも先に受取人が亡くなるケースも少なくありません。
このケースでは、受取人の法定相続人が死亡保険金を受け取る人になります。
なお、この場合の保険金の受取割合は法定相続分ではありません。
受取人の相続人全員が均等に死亡保険金を受け取ることになります。
2)生命保険金の受取人が被相続人である
2つ目は、生命保険の受取人が被相続人(亡くなった本人)であるというケースです。
通常、死亡保険金の受取人が被相続人であることは少ないと思います。
しかし、解約することを前提に、被相続人自らが受取人となるケースもあります。
あるいは、定期金給付を目的として、受取人を被相続人とする保険契約も存在します。
これらについては、相続の開始時点における解約返戻金相当額が相続財産となります。
3.生命保険を相続で活用する方法
それでは、生命保険金を相続対策に活用する方法にはどのようなものがあるでしょうか。
以下の2つのパターンに分けて詳しく解説していきます。
1)ほかの相続人より多く財産(お金)を残す
相続財産の分配は、民法により明確に順位が定められています。
① 相続順位と遺言・遺留分
→相続財産の分配方法については、こちらの記事が参考になります。
ただし、遺言書で被相続人の意思を反映することは可能です。
例えば、「○○にすべての財産を相続させる」といった具合です。
しかし、この遺言が原因でトラブルを引き起こすこともあります。気をつけてください。
仮に、遺言に「すべての財産を特定の相続人に残す」と記したとします。
被相続人が自ら決めた遺言ですから、何があっても優先されると思いがちです。
ところが、そういうわけにはいきません。
なぜなら、一定の相続人には、最低限の遺産を確保する権利があるからです。
この権利のことを遺留分といいます。
遺留分という権利は、遺言でも奪うことができない強固な制度です。
したがって、本来相続できるはず遺産を取得できなかった(侵害された)相続人は、侵害した相手に財産の取戻しを金銭で請求することができるのです。
② 生命保険でお金に名前をつける
そんな時は、生命保険の活用が効果的です。
なぜなら、生命保険は特定の相手へお金に「名前をつけて」残すことができるからです。
先ほども申し上げたとおり、生命保険は民法上の相続財産ではありません。
生命保険金は、受取人固有の財産という取り扱いになります。
そこで、財産をより多く残したい人を生命保険の受取人に指定しておくのです。
そうすることで、遺産分割協議を要せず、直接お金を残すことが可能になります。
相続人で分割する遺産とは別に、この保険金分を渡すことができるわけです。
さらに、生命保険金で残すことで、遺留分の問題も回避できる場合があります。
③ 生命保険と特別受益
遺留分を計算する際には特別受益が考慮されます。
特別受益とは、一部の相続人だけが被相続人から受け取った財産や利益のことです。
遺産分割協議は、特別受益分を相続開始時点の遺産に加えて行われます。
この特別受益を相続財産に加えて調整することを持ち戻しといいます。
つまり、特別受益の持ち戻しは、相続財産を公平に分けるための制度です。
その時に問題になるのが、生命保険金の取り扱いです。
被相続人が契約(保険料負担)していた生命保険は、特別受益に該当するのでしょうか。
基本的に、生命保険金は特別受益に該当しないとされています。
ですから、遺留分の計算で生命保険金を考慮する必要はありません。
でも、これを逆手に取って、財産の大半を生命保険で特定の人に渡すのはNGです。
そういった「やりすぎ」は特別受益と判断される可能性があります。
この点は注意しておいてください。
2)相続税の納付資金として用意する
次に、生命保険を相続税の納税資金として用意する方法について説明します。
相続人の方が感じる不安の一つに「相続税の負担」があるのではないでしょうか。
特に、現金や預貯金以外に不動産・土地などが相続財産の多数を占める場合です。
こうした場合は、遺産の中から納税資金を捻出できないことがあります。
そうなってしまうと、相続人には多額の持ち出しが生じてしまいます。
実際、高額な税負担のために相続自体を放棄してしまうケースも少なくありません。
とはいえ、先祖代々の土地や思い入れのある不動産の処分や物納は心苦しいものです。
そんな時は、生命保険金で納税資金を用意することで対応しましょう。
すでに相続の問題に直面している方は難しいかもしれません。
でも、これから納税資金のために生命保険に加入するのは全然間に合います。
その時は、ぜひ相続税の負担額をあらかじめ計算してみてください。
その上で、必要な保険金の受取額を決定されることをおすすめします。
4.まとめ
今回は、生命保険と相続の関係性や相続対策としての活用方法について解説しました。
原則として、生命保険金は相続財産にはあたりません。
なぜなら、死亡保険金は「受取人固有の財産」だからです。
したがって、相続人が複数いる場合でも、遺産分割協議の対象にはなりません。
ただし、死亡保険金は「相続税の課税対象」にはなりますので、注意が必要です。
そのため、死亡保険金がどの程度の課税負担となるのか…。
現在、加入している生命保険は非課税枠が適用できるのか…。
こうした点について、あらかじめ確認しておくことが大切です。
また、生命保険は、次のような相続対策としても効果的です。
- ほかの相続人よりも多く財産(お金)を直接のこす
- 相続税の納税資金として準備する
- 非課税枠を利用して、相続税の負担を軽減させる
ただし、慎重に対応しなければならないケースも少なくありません。
相続対策に生命保険の活用を考えている方は、相続セミナー等で専門家の話を聞いてみるのも一つの手です。
興味のある方は、ぜひこちらからご参加ください。