- 2022.05.14(土)
- 相続
相続分の譲渡とは?
相続分の譲渡とは一体何でしょう?
相続する時に、
目次
1.相続分の譲渡
相続財産のことでトラブルになるのは避けたい
そういった理由で、
自分は相続財産はいらないから、
他の誰かに自分の相続分を譲ることを言います。
遺産分割協議などで起こる
親族間の財産もめに対して、
1)贈与とは
贈与って、ただ(無償)で物をあげたら贈与なんじゃないの?
…普通はそう思いますよね。
でも、実は違うんです。
贈与が成立するためには、あるお約束事が必要です。
そのお約束事が、民法の549条に定められています。
2)民法549条
ここで、法律ではどのように贈与のルールが定められているのか確認してみます。
(贈与)民法549条
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
上の条文では、贈与の成立には3つの行為が必要だと言っています。
この3つの行為って、何だと思いますか?
3)贈与に必要な3つの行為
民法549条では、次の行為が贈与の成立に必要だとしています。
- あげる
- もらう
- つかえる
要するに、贈与には登場人物が2人必要だということです。
「あげる人」と「もらう人」です。
この両者が、贈与時に、贈与の事実を承知している必要があります。
さらに、「もらった人」は「もらった財産が使える」状態になってないといけません。
では、ここで言う「使える」状態って、どんな状態でしょう?
それは、もらった人が、もらった財産を、ご自分で持っているということです。
少し、専門的になりますが、これが民法549条でいう「受諾」にあたります。
贈与の当事者である双方が贈与の事実を認識している。
そして、贈与を受けた人は、贈与財産を自ら所有管理している。
これが「贈与が成立している」状態になります。
2.名義預金と時効
それでは、もし、相続税の税務調査で名義預金を指摘されたら、どう反論しますか?
「名義預金?もうとっくに時効でしょ。」
10年も20年も昔の話であれば、時効の主張を考えますよね。
だけど、そもそも、名義預金に時効ってあるんでしょうか?
1)名義預金に時効はあるのか?
結論から申し上げます。
残念ながら、名義預金に時効はありません。
ですから、何十年前の分でも遡って、相続財産として取り扱われることになります。
なぜ、時効がないんでしょうか?
質問の仕方を変えてみますね。
それでは、名義預金ではない理由として、何の時効を主張しますか?
そうです。
贈与税の時効ですよね。
贈与税の時効を理由に、名義預金に該当しない旨を主張したいわけです。
それでは、贈与の時効って何年なんでしょう。
2)贈与税の時効は何年?
贈与税の時効は、原則「申告期限の翌日」から6年です。
ただし、脱税目的で贈与の事実を隠すなど、故意に申告を怠っていた場合は7年です。
なお、贈与税の時効に関しては、贈与の成立が大前提です。
そして、贈与成立のためには、「お約束事」が守られていなければいけませんでした。
名義預金の場合は、このお約束(成立要件)が守られているのでしょうか?
3)名義預金に時効がない理由
贈与が法律的に成立するのに必要なのは、3つの行為でした。
「あげる、もらう、つかえる」です。
この「あげる、もらう、つかえる」ができた時に、贈与税の時効の針が回り始めます。
(正確に言えば、暦年贈与が成立した翌年の申告期限の翌日から)
それでは、名義預金の場合はどうでしょう。
名義預金とは、「贈与したつもりの預金」です。
言い換えれば、「あげる、もらう、つかえる」ができていない財産です。
贈与できてないのだから、当然、時効の開始ボタンも押されていない状態です。
つまり、そもそも時効がスタートしていないんです。
だから、何十年経っても、贈与税の時効が成立するなんてことはないってことです。
繰り返しになりますが、贈与税の時効の6年は、「贈与の成立」が大前提です。
名義預金のように、贈与が成立していないものに贈与税の時効が及ぶことはありません。
ですから、名義預金に時効はないんです。
したがって、税務署は、何十年前の分でも申告漏れを指摘できるというわけです。
3.名義預金の解約
自分が所有する子供名義の通帳へお金を入金する。
それを贈与だと思って、今まで何の疑いもなく入金を繰り返していた。
これが名義預金を所有してしまっているケースの殆どです。
では、すでに名義預金を持ってしまっている場合、どう対処したらいいでしょうか?
その場合の対応方法は大きく2つです。
- 忘れずに相続財産として計上する。
- 本来の正しい所有者へ戻して、確実に渡せるしくみ(贈与や保険)をつくる。
ただし、実際の所有者と名義人双方がお元気であれば、名義預金の解消が望ましいです。
名義預金の解約です。
つまり、本当の所有者の入れ物に戻すということです。
なお、ここでいう「お元気」とは、「意思能力がある」ことを意味しています。
1)名義預金の解消方法(親子のケース)
名義預金というのは、法律的にみれば、所有者自らの資金移動にすぎません。
所有者がお父さんで、口座の名義人がお子さんだったとします。
お父さんが右ポケットから子供の名前が書いてある左ポケットへお金を移した。
法律的にはこれと同じです。
ところが、今は本人確認が厳格に行われています。
お父さんは、ATMから少額を引き出すことはできるかもしれません。
(正しい行為ではありませんが…。)
でも、お子さん名義の預金を自由に使ったり、処分することはできません。
つまり、名義預金とは、何とも不自由で使い勝手が悪い財産ということになります。
法律上は自分のものなのにです。
自分で解約することすらできません。
それでは、この名義預金の解消手続きはどうしたらよいでしょうか?
父(贈与者)と子(受贈者)のケースで考えてみます。
2)父から名義人である子への事情説明
本当の所有者なのに、父は、自分でこの口座を解約することができません。
そこで、先ずは名義人であるお子さんに、次のように事情を話します。
- あなたのためを想って、自分の手元であなた名義の口座にお金を貯めていたと。
- ところが、これは贈与したことになっていないこと。
- 将来、相続の際にトラブルの原因になりかねないこと。
- そこで、正しい形(本来の所有者である自分の入れ物)へ戻したいこと。
3)子による名義預金口座の解約
事情を聞いたお子さんが納得したら、金融機関で名義預金の解約手続きを行います。
この時に窓口へ出向いて解約するのは、名義人であるお子さんということになります。
4)子から本来の所有者(親)への資金移動
解約ができましたら、そのお金を父の口座へ資金を移動します。
その際は、解約した名義預金のお金であることが確認できる方法で行います。
そして、次が大事です。
必ず、一連の経緯について、父もしくは父子で記録文章を作成してください。
なぜなら、ここで記録を残しておかないと、わからないからです。
この記録がないと、事情を知らない人は、お金の動きを見てこう思うはずです。
「子供から親への贈与だ」、「逆贈与だ」と。
ですから、「この資金移動は名義預金を正しい持主に戻したんですよ。」
このことが、将来、いつ誰が見てもわかるようにしておく必要があるのです。
4.本当の名義預金対策
先ほどの手続きで無事、名義預金を解約することができました。
本当の所有者である父の口座へお金を戻せたとします。
でも、ここで終わりではありません。
確かに、名義預金の是正という意味ではこれで完了です。
しかし、相続・相続税対策としてはここで終わってはいけません。
なぜなら、解約は、正しい持主にお金を戻しただけにすぎないからです。
だけど、少し考えてください。
そもそも、なんでお父さんは名義預金をお持ちだったのでしょうか?
なぜ、お子さんに内緒で、手元で子供名義の通帳にお金を貯め続けてきたのでしょうか?
理由は簡単です。
それは、このお金を名義人であるお子さんに残してあげたいからです。
でも、今はまだその時期ではない。
無駄使いが心配。
親のお金を当てにせず自分で頑張ってほしい…。
きっと、様々な理由から子供には知らせず、使えない状態で管理してきたんでしょう。
100%愛情であり、親ごころです。
名義預金のリセットで正しい場所へお金が戻せました。
でも、その続き、本当にしてあげたかったことできて対策は完成します。
本当にしてあげたかったこと。
それは「大事な家族にお金を残す」ことです。
そのために確実に渡せるしくみ(贈与や保険)をつくる。
この「残す」「渡す」仕組みについては、生命保険を活用する方法などがあります。
これらについては、別の機会に改めてご紹介します。